「偽りの人生」とは?
「あなたは”本当の人生”を生きていますか?」と問われたら、どのように答えるでしょうか?
私は、人生にも「偽りの人生」と「本当の人生」があると考えています。
偽りの人生のまま生きていると、なかなか充実感や自己肯定感を持つことができません。
一方、本当の人生を生きていると、エネルギーがあふれてきて、幸せを感じます。
では、偽りの人生とはどんな人生でしょうか?
それは、「他者の目を意識した人生」です。「人からどう見られるか、どう思われるか」を過度に意識した人生です。
「他者本位の人生」と言ってもいいかもしれません。
他者の目や評価を気にして、自分の本当の気持ちや欲求を二の次にしていると、自信や自己価値感を持つことができなくなります。そうすると、人生がどんどん退屈でつまらないものになってしまうのです。
それもこれも、「自分がどのように生きたいのか」「どんな人間になりたいのか」「本当は何をしたいのか」という「自己実現の欲求(衝動)」を抑圧して、本来の自己を見失っているからなのです。
偽物の人生とは?
他人に悪く思われないように、自分を装って生きる人生のこと。
「疑似自己」が、退屈な人生を生む
特に日本では、「自分の意見はあまり言わずに、全体の空気・周りの空気に合わせる」ことが伝統的に美徳とされてきました。いわゆるムラ社会的な文化であり、最近では同調圧力とも言われます。
しかし、一方でそのことが、「他人からどう見られるのか」「人から嫌われたくない」という意識を強め、心理学で言われる「自我の発達」を阻害する原因にもなっています。
心理学者のマズローは、親や周囲の人間の期待に応えるために作り上げたニセモノの自分のことを「疑似自己」と呼んでいます。疑似自己で生きていると、人は「本来の自己」を容易に見失ってしまいます。
「自分が本当にやりたいことがわからない」「最近何に対しても興味ややる気が持てない」という人は、一度、「これまで自分は他者の期待に合わせすぎていたり、自分の心の欲求を我慢してこなかったか」をチェックしてみるといいかもしれません。
「本来の自己」を取り戻すための3つのアクション
では、「疑似自己(他人用につくった自分)」を手放し、本来の自分を回復し、「本当の人生」を生きるためにはどうしたらいいのでしょうか?
大事なことは、他人から嫌われないことを目的にするのではなく、「本来の自己」の欲求を大切にすることです。
具体的には、以下の3つを実践してみることをおすすめします。
本来の自己を回復する3つのアクション
1. 自分が好きなこと、喜びを感じることをやってみる(自分にその許可を与える)
2. 自分が「イヤ」と感じることには、「ノー」を言う練習をする
3. 折々に、「自分は本当はどうしたいのか?」を自分に問いかけるクセをつける
それぞれ簡単に見ていきましょう。
1. 自分が好きなこと、喜びを感じることをやってみる(自分にその許可を与える)
上記のマズローは次のような言葉を残しています。
自分はなにを喜びとしているのかを見る能力をとり戻すことが、踏みにじられている自己を再発見する最善の方法である。
マズロー
まず、「自分は本当は何が好きなのか?」「どんな時に喜びや充実を感じるのか?」「今、何をやってみたいと思っているのか?」を紙に書き出してみるところから始めてみましょう。そして、そのリストの中で一番ワクワクすることを実際にやってみましょう。
そうやって、日々の中で、自分の心の欲求を満たす行動を少しずつ増やしていくことが、本来の自己とのつながりを強めてくれます。
2. 自分が「イヤ」と感じることには、「ノー」を言う練習をする
人目を気にして、自分の気持ちを大切にできていない人の特徴の1つとして、自分の中の「イヤ」という感情を押し殺してしまうことが挙げられます。
「本当はイヤなのに、無理に人に合わせてしまう」
「本当は行きたくない誘いだけど、嫌われたくないから断れない」
「相手をがっかりさせてたくないから、”イェス”と言ってしまう」
そんなふうに、自分の感情や本当の気持ちを押し殺してしまうと、とても生きづらく、悶々として、ストレスも強くなってしまいます。そもそも、どちらか一方が我慢をするような関係は、長続きする関係ではありませんね。
まずは、自分の「イヤ」という気持ちを尊重し、それを相手に伝える練習をすることが大切です。
イヤなことに対して「ノー」を言うことは、自分と相手の間に「境界線」を引く行為です。「ここからは私のスペースです。ここから先はご遠慮願います」ということです。
こうして自分と相手の間に境界線をしっかりと引けるようになると、人は自らの内に「安全基地(セキュアベースとも言います)」を築くことができます。
そして、自らの内なる安全基地を築き育てていくことができると、人はありのままの自分自身でいることに安心を感じるようになり、心の中に喜びや充実感、ワクワクする気持ちを育てていくことができるようになるのです。
まずは、自分が「イヤ」と言えずに我慢していることはないか、振り返ってみましょう。そして、その「イヤ」を発見したら、それをどのように解決できるか、相手に健全に伝えるにはどうしたらいいか、考えてみましょう。
いきなりは難しいのは当然です。徐々に少しずつで大丈夫です。自分の「イヤ」を尊重し、相手に健全に伝える練習を重ねていくと、人生の充実度が変わっていくのが実感できるはずです。
3. 折々に、「自分は本当はどうしたいのか?」を自分に問いかけるクセをつける
現代の社会は、さまざまな情報で溢れています。テレビやSNSを見れば、他の人の充実した(ように見える)人生の様子が否応なく目に入ってきます。そんなコンテンツばかりに触れていると、自分の心の欲求をないがしろにし、他者に振り回される人生に陥ってしまいます。自分の人生に集中できなくなるのです。
だから、時折「で、自分は本当はどうしたいの?」と心に問いかけてあげましょう。
誰かに気兼ねして自分の本当の気持ちを抑え込んでいなかったか、自分より上手な人がいるからと最初からあきらめてしまっていることはなかったか。
そうやって、自分の心と対話をする時間を、1日や1週間の中で取ってあげることをオススメします。
忘れないでもらいたいことは、自分を押し殺して生きていることによる他者への影響です。
あなたが我慢して生きていると、家族や友人、上司や部下も「自分も我慢しないといけないのではないか」と無意識に思ってしまうということです。
逆に、あなたが少しでも自分の心に正直に、自分らしく生き始めると、それも周りに伝染します。
あなたが本来の自分を生き始めたときに、あなたの人生でなく、あなたと関わる周囲の人生まで変わり始めるのです。
自分の光を輝かせれば他の人たちが輝くことも無意識のうちに許せるようになります。
自分の恐れから解放されたとき、そこにいるだけで私たちは自然に他の人たちも解放することができるのです。
ネルソン・マンデラ