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令和の高橋是清が今こそ必要という話。

高橋是清の財政観ー「政府の借金」と「家計の借金」

かつて日本には、高橋是清という蔵相、日銀総裁、そして首相まで務めた大人物がいました。彼は小さい頃に行ったアメリカ留学で、知らぬ間に奴隷として売られて労働させられるなど波瀾万丈な人生なのですが、持ち前の明るさとバイタリティで政財界のリーダーに上り詰め、世界恐慌からいち早く日本を救い出した経済手腕は今でも高く評価されています。

今の日本では「政府の借金」と「家計の借金」を同じように考える間違った考え方が未だに広く見られます。「借金はゼロにすべきだ。そうしないと子孫にツケを残す!😠」という言い方は家計には当てはまりますが、政府(国家)には当てはまりません。高橋是清はこのことをよく理解していたので、デフレで貧血状態の経済に思いっきりお金を注入して昭和恐慌の難局を乗り切れました。

高橋是清は次のような言葉を残しています。

緊縮という問題を論ずるにあたっては、先ず国の経済と個人の経済との区別を明らかにせねばなぬ。

彼はこのように述べたあと、ケインズに先駆けて「合成の誤謬」の話をします。その部分は割愛しますが、「合成の誤謬」とは要するに、個人・家計にとって合理的な行動(例: 節約)であっても、それが合成されたマクロ経済・国民経済の視点から見れば、需要・生産力(GDP)の減少となって現れる、ということです。

高橋是清は、ケインズの登場に先駆けて、明確にマクロ経済・国民経済の視点を持っていました。

財政破綻論の嘘

日本のみならず、アメリカ、イギリスなどの先進国において、この約200年間、政府債務は右肩上がりでずっと増加し続けています。つまり政府の”借金”は増え続けています。これは当然の話で、経済が成長し、経済のパイが大きくなればそれだけお金が必要になるからです。経済という国の動脈に、「貨幣」という血をつくり出して流すのは政府・国家の仕事です。

「借金を増やし続けたら、いずれ財政破綻(デフォルト)するじゃないか!」と”家計の感覚”で経済を捉えていると、真実を見誤ってしまいます。

これは主流派の経済学者も同意することですが、「自国通貨建(日本の場合だったら「円」)の国債を発行できる国」が財政破綻することはありえません。これは10年以上も前から言われていることであり、最近になって国民の間でもようやく広まってきた感があります。むしろ財務省ですら、そのことを裏で認めているわけです。(外国格付け会社宛意見書要旨: https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm

日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。(外国格付け会社宛意見書要旨より抜粋)

おいおい財務省。裏では日本の財政破綻はありえないということを知っていて、なぜ「財政規律」「財政再建」なんて抜かしやがる...、と思ってしまいますね。

そもそも家計や企業と政府の大きな違いは何でしょう?

家計や企業とは違って「通貨発行権」(政府による信用創造)を持っている、つまりお金を文字通りゼロから生み出せるのが政府です。円を生み出せる政府が、円建ての債務で破綻するわけがありませんよね。(財政破綻をするのは、外貨建ての借金、もしくは自国通貨建であっても固定為替相場制を採用している国の場合だけです)

最近は財政破綻論も進化しており、「日銀破綻論」を持ち出す人も増えている模様。

「日銀が大量に保有している国債の価格が下落(金利が上昇)したら、日銀の収益が悪化し、債務超過になって破綻する!😠」

というわけですが、日銀はそもそも時価会計を採用していない(償却原価方式)のでそんなことは起こりえないと日銀自体が否定していますし、実際オーストラリア中銀は、2022年に債務超過に陥っていますが、なんら問題なく業務を続けています。ちなみに、オーストラリア中銀は時価会計を採用しています。

「安全保障」「デフレの克服」は政府のミッション

むしろこうした財政破綻論や日銀破綻論をとなえることで、日本が向き合わなければならないさまざまな直近の安全保障(防衛、防災、食料、インフラ、通信など)や産業育成への支出に及び腰になるのは明らかな罪ではないでしょうか?「不作為の罪」(為すべき立場にありながら、為すべき事をしない罪)ってやつです。

たとえば、南海トラフ大地震。この30年以内に70-80%、40年の以内に90%の確率で起きると言われています。これは「ほぼ起きるのは間違いない」ということですよね。静岡県や愛知県を中心とした太平洋沿岸地域は大きな被害を受けると言われています。そのような危機・非常事態に備えて、民間ではできないさまざまな防災・防潮対策、インフラ、安全保障への投資を、平時の今から行っておくのが政府の仕事でありミッションではないでしょうか?

「政府の借金」と「家計の借金」を同じように捉える”感覚”を多くの日本人が捨てない限り、財務省やメディアに騙され続けて、とんちんかんな経済政策をする政治家がずーっとのさばることになります。

正しい財政観に目覚める国民が一人でも増えていくことが、この国の未来にとってとても大切なことなんです。

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