PDCAよりQPMI

ビジネス 読書・書評

【本】人と違う法則性を発見して成果を上げよう。注目のビジネス書『ハック思考』(須藤憲司)を読む。

今日紹介する本は、『ハック思考』(須藤憲司)です。

著者の須藤憲司さんは、Kaizen Platformの代表取締役であり、グロースハッカー。

グロースハッカーとは、IT用語で「グロース(Growth:成長)をハック(Hack)する人」のこと。つまり、企業や事業の成長を実現することをミッションとした人のことを指します。

この本では、「いかに世界をハックするか」をテーマとして、須藤さんのこれまでの経験から導き出された思考法が詳しく解説されてます。

 

ハック思考とは?

「ハック」とは、より少ない労力で最大の成果をあげることを目的としています。

どうすれば、我々は「ハックする」ことができるようになるのか。須藤さんは2ステップで簡単にまとめてくれてます。

世界をハックするための2ステップ

  1. 人と違う法則・規則性(真の因果関係)を見つけて、

  2.その法則・規則を構成するシステムのスキマに介入する

エレベーターの待ち時間を短縮するためには?

たとえば、この本の中では、「オフィスのエレベーターの待ち時間が長い」という社員からのクレームを解決するという実際にあった有名な問題を紹介しています。

この問題を、「新しいエレベーターを増設する」「新しい制御装置をとりつける」などの多額のコストをかけないで、いかに解決するか。

その会社の入社したばかりの新人が提案したアイデアによって、この問題は解決します。

それは、「各階のエレベーターホールに大きな鏡をとりつける」というもの。

大きな鏡があれば、みんな鏡を見て自分の身だしなみを直したり、後ろにいる魅力的な異性に気をとられたりするわけです。

これによって、待ち時間の長さが気にならなくなった。

ポイントは、真の問題を「待ち時間」→「待ち時間と認識する時間」と定義し直して、システムのスキマに介入したということですね。

つまり、上記の2ステップに当てはめれば、

1.人と違う法則・規則性(真の因果関係)を見つけて、

待ち時間が長いからクレームが起きてる→待ち時間だと認識している時間が長いからクレームが起きている

2.その法則・規則を構成するシステムのスキマに介入する

鏡を置くことで、待っていると認識している時間を減らす

ということをやったわけですね。

この本の最後には、現代のいろいろな社会課題に対して上記の2ステップを当てはめた場合の具体例が載っているのですが、それが結構面白いです。(たとえば、「マッチングアプリのマッチング率を高めたい」「学校の退学率を減らしたい」など)

 

ハック思考の4つの視点

須藤さんは、ハック思考に不可欠な4つの視点として以下を挙げています。

ハック思考に不可欠な4つの視点

1. 観察    変化を見つける

2. 考察    観察から法則・規則性を見つけだす

3. 推察    法則・規則性の転用先を探す

4. 洞察    目の前に起きた事象と全く異なる因果関係に気づく

たとえば、”花の生育”を4つの視点で見るとどうなるか。

1.  観察    変化を見つける

「昨日はつぼみだった朝顔が朝咲いた」

2. 考察    観察から法則・規則性を見つけだす

「花は朝に咲くものなのだろうか?」

3. 推察    法則・規則性の転用先を探す

「朝顔は朝に咲く。ということは、すべての花は朝に咲くのだろう。」

現実からのフィードバック→「朝咲かない花もあるな」

「なぜ朝顔は朝に咲くのだろうか?」(考察)

「他にどんな花が朝に咲くだろうか?」(推察)

4. 洞察    (目の前に起きた事象と)全く異なる因果関係に気づく

「朝顔が朝に咲くということは、きっと朝に活動する虫が受粉を助けているか、助けはいらないのか、どちらかだろう」

この4つのステップを行ったり来たりしながら深めていくで、新しい着眼点を得ることができるようになります。

 

優れたビジネスモデルの4つのポイント

個人的に、面白いと思ったのは、優れたビジネスモデルの4つのポイントというところ。

須藤さんは、15歳の時に、「最強のビジネスモデルは何だろう?」と考えたそうです。

須藤さんが導き出した答えは、「宗教」「賭博」「資源」「国家」の4つ。

そこから、須藤さんは、新規事業を発想する際は、以下の「4つの切り口」を考えるようになったとのこと。

ビジネスモデルを考える4つの切り口

もし、今の時代の新しい信仰心があるとしたら何だろう?

もし、今の時代の新しい中毒があるとしたら何だろう?

もし、今の時代の新しい資源があるとしたら何だろう?

もし、今の時代の新しい税金があるとしたら何だろう?

面白い問いですよね。

 

PDCAよりQPMI

本の最後の方で、須藤さんは、東大発のベンチャー企業の経営者である丸幸弘さんの言葉を引用しています。

「PDCAよりQPMIを大事にして経営したい」

質(Quality)の高い問題(Question)に対して、個人(Personal)が崇高なまでの情熱(Passion)を傾け、信頼できる仲間たち(Member)と共有できる目的(Mission)に変え、解決する。そして、諦めずに試行錯誤を続けていけば、革新(Innovation)や発明(Invention)を起こすことができる。(丸幸弘)

この言葉を引用したあとに、次のように言います。

”経営の根幹には質の高い問いが必要だ”ということです。(中略)

そして、”質の高い問い”は、”熱狂”を生み出すと僕は信じています。(中略)

うまくいかないときは、自分たちが取り組んでいるQuestionを疑っていくほうがいいという気がしています。(P176. P177)

燃えるテーマを掲げることのできる 問い(Question)の設定力」がこれからのビジネスを左右する。

自分が今どのような問いを持って生きているのか常に振り返っていくことが大切だと思いました。

質の高い問いに基づいて、情熱と使命を持って生きていきたいですね。

これらの他にも、様々なハック思考の実践的な内容が学べるオススメの一冊です。

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