こんにちは。
今日は世界経済を理解する上での必須知識の一つとも言えるGDPについてわかりやすく解説していきたいと思います。
GDPとは?
「GDP」とは、「Gross Domestic Product」の略であり、「国内総生産」と訳されます。
文字通り、「国内で(1年間に)生み出されたモノやサービスの合計」を表します。
言い換えれば、「国内で(1年間に)生み出された”付加価値”の合計」です。
「付加価値」とは、売上高とは少し違います。たとえば、A社が、2万円の材料を仕入れて、5万円の製品として売ったとしたら、A社が生み出した付加価値は3万円になります。
つまり、他者が生み出した価値に、自社が使け加えた価値が付加価値です。
これを国内において全部足しあげたものが、付加価値の合計、すなわちGDPになります。
GDPは、その国の経済規模を表す指標でもあります。
このGDPに関係するプレイヤー(経済主体)は、「家計」「企業」「政府」「海外」です。この4つのプレイヤーを頭に入れるとGDPがより理解しやすくなります。
GDP(国内総生産)とは?
「国内で(1年間に)生み出された”付加価値”の合計」のこと。
GDPは、その国の経済規模を表す指標でもあります。
GDPの「三面等価の法則」とは?
さて、ここで重要なのは、GDPは3つの側面から見ることができるということです。
3つの側面とは、「生産面のGDP」「支出面のGDP」「分配面のGDP」です。
これら3つが全て等しくなるのがGDPの特徴です。
これを「GDPの三面等価の原則」といいます。同じものを3つの窓から見ているイメージですね。
GDPの三面等価の原則
⇒「生産面のGDP」「支出面のGDP]「分配面のGDP」は全て等しくなる
生産面のGDP
冒頭で説明した、GDPは「その国で1年間で生み出された付加価値の合計」という定義は、生産面から見たGDPのことです。
支出面のGDP
生産された最終製品やサービスには、お金が支払われます。「その国で1年間で支出されたお金の合計」、これが支出面から見たGDPです。家計や企業、政府などの経済のプレイヤ―が払ったお金の合計ですね。
分配面のGDP
さらに、支出されたお金は必ず誰かの所得として分配されます。「その国で1年間で稼がれた所得の合計」、これが分配面のGDPです。家計に分配されたらお給料ですし、企業に分配されたら余剰金になりますし、政府に分配されたら税金になります。
このように、GDPはその国が1年間に生み出せる付加価値の合計であり、支出したお金の合計であり、稼がれた所得の合計でもあるわけです。
それゆえに、GDPはその国の豊かさを表す指標になるわけですね。
GDPが毎年大きくなっている状態を「経済成長」といいます。経済成長している国は国民が豊かになっていきます。
ちなみに、海外からの輸入はGDPには換算しません。輸入されたモノやサービスは、国内ではなく海外で生み出された付加価値だからです。逆に輸出は、日本でつくった付加価値に海外が支出するのでGDPに含みます。
支出面のGDPを押さえよう
これら3つの中で、まず押さえておくべきなのは支出面のGDPです。まずは、これだけ理解しておけば大丈夫です。
支出面のGDPは以下の式で表されます。
支出面のGDP
GDP(付加価値、国内総所得、国内総生産)=個人消費+民間投資+政府支出+純輸出(=輸出-輸入)
⇔GDP=C+I+G+(X-M) -★
かんたんに各項目を見てみましょう。
個人消費(C:Consumption)
正式には「民間最終消費支出」と言われます。家計や企業の消費のことです。
民間投資(I:Investment)
家計や企業などの民間における「住宅投資」や、企業の「設備投資」や「在庫」などを指します。
政府支出(G:Government spending)
政府が負担している医療費や介護費や、公務員への給与支払いである「政府最終消費支出」。そして、いわゆる公共投資と言われる「公的固定資本形成」のことです。
純輸出(X-M:Export-Import)
「財・サービスの輸出」から「財・サービスの輸入」を差し引いたものです。(経常収支における「貿易・サービス収支」ですね)
ちなみに、政府支出(G)も結局のところ、政府による消費(C)と投資(I)ですので、民間の消費と投資と合わせることで、★の式は以下のように簡易化できます。
支出面のGDP(等式変換)
GDP(付加価値、国内総所得、国内総生産)=消費+投資+純輸出(=輸出-輸入)
⇔GDP=C+I+(X-M)
ちなみに、現在日本のGDPは約500兆円ほどです。
日本のGDPの特徴は、個人消費が全体の6割ほどあることです。「日本は消費者大国」と言われることもありますが、日本経済はわれわれのような消費者のお買い物が牽引しているということです。
今、安倍政権が消費税を8%から10%に増税しようとしています(記事作成時点。10月1日をもって、予定通り消費税が増税されました)が、これは日本経済のエンジンである個人消費を冷え込ませて、経済を破壊する愚策だと私は思います。
GDPには「実質値」と「名目値」がある
もう一つ重要な点は、GDPには「実質値」と「名目値」がある、ということです。「実質GDP」と「名目GDP」です。
2つの違いは、「物価変動分を調整しているかどうか」です。物価変動というのは要するに「インフレ率」です。名目値はインフレ率も含んで換算しているのに対し、実質値はインフレ率分は差し引いています。
インフレ率というのは、「物価上昇率」のことです。
たとえば、インフレ率が2%だと仮定した場合、今日100円の缶ジュースは、来年には102円になります。モノやサービスの供給の量は同じなのに、2円分GDPは勝手に増えてしまうわけですね。この2円分の物価の上昇をGDPに換算するのが名目値、差し引くのが実質値です。
つまり、名目GDP=実質GDP×(1+インフレ率)です。
名目GDP=実質GDP×(1+インフレ率)
名目GDPと実質GDPの関係は3パターンあります。
1. 名目も実質も成長している
健全な経済成長の姿です。理想は、実質が成長しつつ、インフレ率が2%程度で、名目も成長していることです。
2. 名目は横ばいor低下、実質は成長
実質は成長しているのに、名目は横ばいor低下というのは、経済がデフレ状態ということです。まさしく今の日本の状況です。
デフレ下においては、モノやサービスの価格が下がっていくので、同じものを同じ量売ってもトータルの収益は下がってしまいます。
このような状況下では、企業の経営者は賃金も雇用を増やすことはできませんし、そのため、経済はどんどん悪化していきます。
3. 名目は成長、実質は横ばいor低下
名目は成長しているのに、実質が停滞している場合は、インフレの状態ですが、実質が増えていないということは、国内で生み出されるモノやサービスなどの付加価値が増えていない(支出も所得も増えていない)ということなので、これはこれで問題です。
消費が増えていないのに、名目で物価が上がっているということであれば、生活は苦しくなっているということです。
以上、GDPについての基礎知識を紹介しました。
実は、GDPを経常収支との関係で見ると、これまたさらにいろんなことが見えてくるのですが、それについてはまた違う記事で書いていきたいと思います。
経常収支について知りたい方はぜひ下の記事も参考にしてみてください。