ファイナンスについてはこれまで何冊も本を読んできたけど、わかりやすい入門書としてオススメなのが『ファイナンスから考える』。
著者は、ウォルトディズニージャパンのファイナンスマネジャーも務めたことがある梅澤真由美さんという方。
「会計」と「ファイナンス」の違い
いきなりですが、みなさん、「会計」と「ファイナンス」の違いってわかりますか?
まえがきには、2つの違いについて以下のように表現されてます。
会計は"表"、ファイナンスは"考え方"。
会計は"単年度"、ファイナンスは"複数年度"。
会計は"バックミラー"、ファイナンスは"ヘッドライト"。
めっちゃわかりやすいし、イメージ掴めますよね。
この基本的なイメージから、”ファイナンスの考え方”について詳しく解説してくれるのがこの本です。
この本では、ファイナンスの考え方として4ステップ挙げられています。(各ステップ章ごとに解説されてます)
ステップ1 「見えないコスト」をあぶり出す
ステップ2 「時間」のズレをとらえる
ステップ3 差を「比較」する
ステップ4 要素に「分解」する
以下、この本を読んで個人的に刺さったポイントを紹介します。
① 身近な事例からファイナンスの考え方を学べる
日常生活やビジネスなどの身近な事例から、ファイナンスの考え方の基本を学べるのがすごくいいです。
たとえば、「ファイナンスは”目に見えないコスト”も意識する」という基本があります。
目に見えないコストの代表的なものは以下の2つです。(本の中ではこの他にも3つ挙げられてます。
1.機会コスト 他の選択肢を選んでいたときに得られたであろう利益
2.埋没コスト すでに支払ってしまったコスト
この2つのコストを意識するだけでも、生活や仕事での意思決定が変わってくるわけです。
たとえば、”面白そうな映画を観に行って、開始30分で駄作だと気づいた場合”に、みなさんだったらどうしますか?
「せっかく1800円ものお金を払ったんだから、たとえつまらなくても最後まで観なきゃもったいない」。
多くの人はこのように考えがちですが、「埋没コスト」の視点で考えると、「すぐに席を立って、別の楽しめることををしたほうがいい」という結論になります。
なぜなら、この場合、すでに支払ってしまった映画チケット代は、「埋没コスト」です。つまり、「もう返ってこないお金」です。
「埋没コストに基づいて意思決定してはいけない」「埋没コストは無視する」というのが、ファイナンス的な考え方の基本なんですね。
つまらない映画を残り1時間半も観続けるより、友達と会ったり、仕事をしたほうがトータルでの満足やメリットがあると考えるわけです。
こんな感じで、よく経験する具体的なシチュエーションからファイナンスの考え方を学べるのでわかりやすいんですよね。
個人的には、「埋没コスト」の視点から見た「コンコルド(超音速航空機)の開発プロジェクトの失敗」の事例が面白くて刺さりました。
機体の開発に膨大な予算と時間をかけたことを意識しすぎたために、採算が合わないとわかりつつも、機体の運行をやめなかったことで、かえって大きな損失を出してしまったという事例です
ここから派生して、「埋没コストに執着して、やめるべきことをやめられない状態」のことを、「コンコルド効果」「コンコルドの誤謬」と言うようになりました。
★「埋没コスト」への対処法
過去(のコスト)に基づいてではなく、未来に発生するであろうコストと収益に基づいて意思決定する
ということですね。なかなか感情的には難しいんですけどね!笑
② 事業の投資判断の仕方がわかりやすく学べる
この本で挙げられているファイナンスの鉄則の1つが、「固定費と変動費(と初期投資)を分ける」ということです。
1.変動費 使用量によって変化する ex)電気水道代、食費など
2.固定費 使用量によって変化しない ex)人件費、家賃、保険料など
3.初期投資 固定費以上に固定的
個人の場合でも、会社の場合でも、お金のマネジメントの第一歩として最も大切なのは、「固定費を削減する」ということです。
変動費は努力すれば減らせますが、固定費はなかなか減らすのが大変です。
しかし、その分固定費は、一度削ればその効果が中長期的に続きます。
さらに、初期投資は、見直せば減らせる固定費とも違い、戻ってくることがないお金なので、「埋没コスト」になります。
それでは、以下の事業Aと事業Bを比べたとき、どちらのほうがリスクが大きいと言えるでしょうか。
事業A=初期投資1000万円+3年×固定費(200万)
事業B=初期投資100万円+3年×固定費(500万)
仮に、採算が取れずに2年目で事業を中止した場合、事業Bのほうが損失は小さくなります。
もちろん、事業規模やビジネスモデル、リスクの許容度によって考え方は違ってくるので一概には言えませんが、「初期投資が大きいことはそれだけリスクになる」ということが言えるわけです。
現在は、自社で生産設備を持たない企業(ファブレスカンパニー)が増えていますが、その理由はこういうところにあるんですね。
ちなみに、変動費が大きいビジネスはリスクは小さいですが、一方固定費が大きいビジネスは、売上が一定のレベルを超えると、利益率が大きくなるというメリットもあります。
ビジネスモデルによって費用・コストをどのように捉えるのかも違ってくるわけですね。
まとめ
ということで、『ファイナンスから考える』のKSPを紹介してきました。
上記のほかにも、
●「機会コスト」「埋没コスト」から新しいビジネスモデルを発想する方法
●ファイナンスで押さえておくべき3大指標
●「現金がコストを生む」とはどういうことか?
など、「これは使えそうだな」という考え方がいろいろありました。
ちなみに私は、この本と以下の2冊(計3冊)でファイナンスの基本についてマスターしました。
- 『ファイナンス思考』(初中級者向け)
- 『ざっくりわかるファイナンス』(中級者向け。名著!漫画版あり)
合わせてオススメしておきます!